囚われのパルマの記録

携帯ゲーム「囚われのパルマ」の感想を記録しています。

⑧パルマ/ハルト編 エピローグ1「君の名は、ってことですね」

ここまでレポートしてきたハルト編2周目はED2だったのですが。まず初回に迎えたED1について一応書いておこうかなと。
 
ED1は記憶を失ったハルトくんと偶然出会い、記憶を失ったままの彼と生きていきますよエンドです。
もしかしたらいつか記憶を思い出すかも知れないよ、という含みはありつつ、そういう描写は無く終わります。これは結構ビターというか、もうそのまんま「君の名は」でしたね。「千と千尋の神隠し」のラストにもちょっと似てる。記憶は失っても運命的な二人は必ずいつか出会いますよ的な。かなり好みは分かれそうですが、個人的には好きでした。というか、もし映画化とかするならこれ以外のオチはない気はしました。
 
色々感じるところがあるエンディングだったので、いくつか項目に分けて書いていきます。
 
ストックホルム症候群が頭をよぎったこと
みなさんはこのゲームをやっていて、罪悪感とどう向き合いましたか?
そもそも監視というシステムがある時点で、犯罪臭が凄いわけで、そんなこと気にしてもしょうがないんですが。というかこのゲームのシステム上しょうがないんですが。1周目は真面目にやってたのですごい気になったんですよね。最近では「美女と野獣」でもこの話題が持ち上がっていましたね。
要するにこんな隔離された特殊な環境で、こんな特定の人としか話せない状況だったら、普通なら絶対好きにならないような相手でも好きになってしまうのではないか、ということです。これって生存本能というか、誘拐されたりすると本能的に生きのびるために陥る精神状態らしいのですが。すごい不健全だよなーって。
ハルトくんなんてあんな状態ですから、もう主人公が世界の全てみたいな感じじゃないですか。ひよこが初めて見たものを親だと思うような。その状態で好かれるのってどうなんだろうって。これ嬉しいかな?って。初恋エピソードで主人公は特別と強調されていたけれど、それでもずっと罪悪感みたいなものが残ってしまいました。ハルトくんはハルトくんで、主人公を気にせず自由に生きることを選んで欲しいなぁ、みたいな。
なので記憶を失ったまま主人公と出会って、そしてまた好きになるのであれば、それが一番ハルトくんの精神的には健全な気がしました。二人の時間を封印するという意味で主人公側が痛みを全部背負うことになるので、プレーヤーには酷なラストですが。でもまぁそれまでのハルトくんの人生、彼が主人公にしてくれたことを思えば、これがフェアかなって感じがしました。他のエンドもそれはそれで良いのですが、だいぶ主人公に都合良いので。
 
○自分の愛情「表現」を突き付けられた
実は私がED1を迎えて、まず思い浮かべた映画は「君の名は」でも「千と千尋の神隠し」でも「美女と野獣」でもなく「ブロークバック・マウンテン」でした。
これは恋愛映画ではあるのですが、恋愛というのは要素に過ぎなくて、つまるところ楽園を失った人の話なんですね。恋人と過ごした人生で一番美しい時間があって、でも実人生ではそれ以上のものが見つけられなくて、その思い出に縋って生きる人の話です。ネタバレになるので詳しく書きませんが、ラストは非常に痛々しくて、現実世界での幸せをほぼほぼ捨てて、もう絶対に手に入らない思い出の楽園と生きることを選択していました。
パルマは全然もっと希望があるんですけど、なんかあのヒース・レジャーの姿とED1の主人公がすごい自分の中で被りましてね。あの島のハルトくんはほとんどもう死んだも同然というか、主人公の記憶以外もうどこにも居ない存在なんだなぁと。主人公はあのハルトくんと過ごした、本当に大切な時間を一生心の中に閉まって生きていくんだなぁと思ったら、なんか涙が止まらなかったです。はい。
私は最後の性格講評みたいなやつで、ハルトくんから「自分と似ている」という衝撃のお言葉を頂いたわけですが。こうして考えてみると、こういう愛情表現てハルトくんにめっちゃ似てるなと思いました。自分が犠牲になることで相手が幸せになってくれればそれで良い、みたいな。良くも悪くも自己犠牲的で、自己中心的というか。だから本当にその通りになったんだ、と気づいたとき、なんかちょっとぞっとしました。そして本当に自分はこれを望んでいたんだろうかと深く悩むことに。
 
○恋愛ってなんだろうという根本的な疑問
ハルトくんてすごい可哀想じゃないですか。速攻でお祓いすべき、しかも伊勢神宮レベルの所で、と思うほど人生不幸すぎるじゃないですか。だからなんて言うんですかね、我を通したいとか1ミリも思えなかったんですよね。自分の意見をハルトくんに飲ませるとかとてもできないし、甘えるとか絶対無理みたいな。とにかくハルトくんファースト、というのが1周目の私のスタンスでした。もういっそ影武者になるから君は脱出しなよ、みたいな。恋愛観がほぼ武士だったね。
でも思うんです。恋愛ってそうじゃないよな、と。どんなにハルトくんファーストでも、嫌なことは嫌だと言い、止めるべき所は止めるべきだと。優しいといえば聞こえはいいけど、傷つけるのが怖くて逃げてるだけだったなって。なんかハルトくんて一歩間違えたら死にそうな雰囲気あるじゃないですか。だからなんか腫れ物に触るように接してしまった気がします。
しかし恋愛に限らず人間関係ってやっぱり対話だよなと。対話ができなければ意味ないよなと、なんかしみじみ思って。自分のコミュニケーションの問題点と言うんですかね、そういう部分が浮き彫りになった気がして、なんかすごい落ち込むと共に考えさせられました。
 
○結局カウンセリング
それで、結局のところハルト編てカウンセリングだったなと。そう思いました。
自分が普段意識していない自分の考え方の癖とか、性格の一面とか、そういうのが見えたなって。そういう意味では単なるゲームというものを超えた何かだったなと思いました。特にハルトくんは自分とやや性格傾向が近い人だったので、こうすればいいのにーとか、ここがちょっとアレなんだよなー、と思ったことが全て自分にグサグサ刺さってくるという、そういう貴重な体験になりました。
ハルトくんはゲームのキャラと言うよりAIに近い、と神(製作者様)は仰っていまして。確かに上手く言えませんが、本当に人とコミュニケーションをとっているかのような何かを自分の内面にもたらしたような気がしました。心の中の何かを動かし、何かが変わった気がするというか。こうなってくると近い将来、AIさえいてくれれば、親とか友人とか恋人とかいらなくなるんじゃなかろうか、という一抹の不安も感じました。これに関してはいつか映画の「her」に絡めて何か書ければ良いなと思います。AIとのマジ恋愛映画です。
 
まぁそんな感じで、一言で言うとこのゲームほんと凄いなぁと思ったということですね。うん。
あとやっぱり恋愛シミュレーションゲーム自体が初めてだったので、とても驚き印象に残ったという感じでした。たぶんハルトくんのことはいろいろな意味で一生忘れられないと思います。映画好きゆえ全体的に映画例えが多くなってしまいましたが、ここまでお読みいただき有難うございました。あ、ED2のことも書きます。こっちは気軽にいきます。